イノベーションの歴史
『イノベーション』について正確な定義は決まっていません
(様々な案が提案されていますが、現時点で決定的な定義はありません)。
あるものを『イノベーションだ』と判断する人もいれば、『イノベーションではない』と判断する人もいるということです。
ここでは、イノベーションの代表的な定義とイノベーション理論の歴史をまとめています。
これにより、イノベーションの『全体像』とその『輪郭』を探っていきたいと思います。
詳細は、本サイトの個別の人物情報を参考にしていただくこととして、
ここでは、できるだけ主観的に全体像をわかりやすく理解できるようにまとめていきたいと思います。
イノベーションの語源、言葉の意味
イノベーションの語源を調べると以下のようにまとめられています。
英語の「innovation」は動詞「innovate」(革新する・刷新する)に名詞語尾「-ation」が付いたもので、
「innovate」はラテン語の動詞「innovare」(リニューアルする)
の完了分詞形「innovatus」(リニューアルされたもの)から由来している。
更に、「innovare」は「in-」(「内部へ」の方向を示す接頭辞)と動詞「novare」(新しくする)に分解される。
動詞「novare」は形容詞の「novus」(新しい)から由来している(
Wikipediaより)
これまでのものと「全く違う」「新しい」ことをする / ものにするという意味です。
「in-」「内部へ」という意味を汲むと外面的ではなく「内面的にも変化する」、
「内にある情熱に突き動かされて」というニュアンスもあると思われます。
さらに、日本語の辞書を調べると、
イノベーション(英: innovation)とは、
物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。
一般には新しい技術の発明を指すと誤解されているが、
それだけでなく新しいアイディアから社会的意義のある新たな価値を創造し、
社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革を意味する。
つまり、それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を
取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすことを指す。(
Wikipediaより)
特に、「画期的」で「大きなインパクト」のあるものだと定義されています。
「画期的なのかどうか」、「インパクトが大きいのかどうか」この点が、
イノベーションとは何かを議論する際に多くの『見解の相違』が出る原因です。
イノベーションの定義
イノベーションという言葉は、もともとは、
ヨーゼフ・シュンペーター
(経済学者)によって、1911年に使われたのが最初です。
シュンペーターはイノベーションを、経済活動の中で生産手段や資源、
労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合することと定義しました。
イノベーションを下記の5つのタイプに分類しました。
- 新しい財貨、新しい品質の財貨の生産
- 新しい生産方法の導入
- 新しい販路の開拓
- 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
ここでは、「何かが新しいもの」と定義されています。
日本では、1958年の『経済白書』でイノベーションが「技術革新」と訳されたことに由来すると言われており、
現在でもイノベーションは「技術革新」と訳されるケースも多くあり、
これは『狭義のイノベーション』と定義されます。
代表的なイノベーション理論
ドラッカーの顧客創造戦略(価値の創造)
経営戦略の大御所ドラッカーによるイノベーションに関する考え方(厳密には、イノベーション論ではない)。
顧客創造戦略(価値の創造)の方法として、
「効用戦略」「価格戦略」「顧客戦略」「価値戦略」の4つの戦略を活用して、
イノベーションを実現するというのが、その基本的な考え方です。
イノベーションに関する議論には必ず経営戦略、事業戦略に関する議論が関わるので、知っておくとよいでしょう。

Source : イノベーションと企業家精神
イノベーション研究の第一人者であるクリステンセン教授の論文では
改善をベースにした持続的イノベーションが継続されるとある段階で、顧客が必要とする性能以上の性能を提供する事態が起きます。
このタイミングで、従来の価値基準のもとではむしろ性能を低下させることになるが、
新しい価値基準の下では従来製品よりも優れた特長を持つ製品・サービスが提供される現象を破壊的イノベーションと呼ぶと書かれています。
スマートフォンなど製造業を中心に様々な分野でこの現象が見られ、
さらに『既存の製品』が気がついたらまったく異なる価値基準で評価されなくなっているというインパクトがあったため、
注目されました。現段階ではもっともスタンダードなイノベーション理論として扱われます。

Source : イノベーションのジレンマ
キム & モボルニュのバリュー・イノベーション
『顧客にとっての価値』にフォーカスして差別化することで画期的な製品・サービスを提供するイノベーション手法のことをバリュー・イノベーションと呼びます。
従来の高機能化、これまでになかった製品の開発とは逆に、顧客にとっての価値にフォーカスして差別化すると同時に、
慣習や既存の思い込みにとらわれずに不必要なものや無駄なものをそぎ落として「低コスト化」を図るケースが多く見受けられます。
イノベーションが不要な高機能、複雑化を追う中で『顧客』にフォーカスを当てて必要かつ十分な製品・
サービスを提供するという考え方が多くの支持を集めました。QBハウスやWiiなどが事例として挙げられます。

Source : ブルー・オーシャン戦略
ゴビン・ダラジャンのリバース・イノベーション
新興国で起こしたイノベーションを先進国に『逆輸入』して大きな成功を収める手法をリバース・イノベーションと呼びます。
従来であれば、先進国で起きたイノベーションが新興国に展開されるという流れでしたが、
①先進国の製品やサービスを新興国に持ち込んでも経済環境、ニーズが異なるために通用しない、
②リソースや技術に限りのある新興国で実現されたことの方が
環境負荷が少ない大きな社会課題を解決するのに役に立つ事例が多くみられるようになってきているという点で、
近年関心が高まっています。

Source : リバース・イノベーション
直近でも、様々な種類のイノベーションが注目を集めています。主なものだけでも下記のようにいくつもありますので、参考にしてください。
- ・ユーザーイノベーション
- サービスの提供側ではなくユーザーを中心にしたイノベーション
- ・オープンイノベーション
- 社外のアイディアやリソースも積極的に活用したイノベーション
- ・ソーシャルイノベーション
- 複雑な社会課題に対する革新的な解決を行う(=イノベーション)
- ・サービスイノベーション
- これまで比較的遅れていたサービス産業におけるイノベーションの研究
イノベーションの方法論や種類に関しては、今後も多く提案されると思いますので、常に最新情報を知っておくことが大切です。
おわりに、まとめ
本ページでは『イノベーションとは何か?』をテーマに、言葉の定義、語源、いくつかの代表的なイノベーション理論についてみてきました。
- 『イノベーション』の明確な定義は存在しない
- 強いて言えば、新しい方法でこれまでにない「何か」を生み出すこと
- 現時点では、様々なイノベーションの分類、起こし方が提唱されている
(それらは、都度、覚えていけばよい)
世の中には、新しいものや価値が生まれ続ける以上、その方法論や事例も新しくなり続けます。
イノベーションという分野について情報収集する人にとって、
常に「新しい理論」「新しい事例」を集め続けるのは、仕方のないこと(宿命)です
(逆に、だからこそ、この『イノベーション』という分野は、おもしろくて魅力的で飽きない分野だと思います)。
本サイトでは、様々な事例・最新ニュースをアップデートしていく予定ですので、ぜひ、ご参考にしてください。
また、実際のビジネスの現場で、どうやってイノベーションを起こすのか、
お悩みお困りのことがあれば、いつでもご連絡ください。
「これをすれば、イノベーションだ!」という魔法の杖はありませんが、一緒に情報をめて一緒に考えさせてください!!
株式会社アイディアポイント
代表取締役社長
岩田徹